グローバル反トラスト・競争方針
序論
アシックス本社として、反トラスト法および競争法(「反トラスト法」)の我々の見解について明確なガイドラインを定めます。アシックスとは、株式会社アシックスおよびその子会社、関連会社をいいます。
我々の経営理念や価値観から、不正競争が容認されないことは明白です。
反トラスト法の目的は、消費者の最大の利益のために市場で有効競争を確保し、維持することです。
反トラスト法は、価格設定、製品の販売促進および販売、販売店や小売店との関係、ならびにもちろん競合企業との関係を含む我々のほぼ全ての取引に影響を与えます。
反トラスト法は、あらゆる国々で一般に類似しており、本ポリシーは我々がビジネスを行うあらゆる国々で適用されます。
不正競争は、ビジネスおよび社会にとって有害です。不正競争は、経済を減退させ、ビジネスを非競争的にさせ、人々から不可欠のサービスを奪います。
我々が最高水準のビジネスを行い、我々が直接的に関連する会社または第三者を通じて活動するあらゆる国で、反トラスト法を含む全ての適用法を確実に遵守して実務を行うのが、我々のポリシーであり、信念です。
本ポリシーは、実施されている現地の反トラストポリシーの補完とみなされます。全ての子会社および関連会社は、本ポリシーと現地のポリシーの両方を遵守しなければなりません。かかる現地のポリシーがない場合、本ポリシーが適用されます。
アシックスは、不正競争に対しては、それがいかなる方法、いかなる形態、世界中のいかなる場所のものであっても許容しないことを誓約します。
定義
競争とは、企業が自社製品の消費者を確保するために互いに戦う過程をいいます。競争においては、典型的には、2社以上の関係者が、最も有利な条件を提示することによって第三者と取引を行うため独立して行動します。
不正競争とは、とりわけ以下に関するあらゆる取引をいいます。
a) 競争相手と価格を決めること
b) 競合企業を市場から排斥するためにコストより低い価格を設定すること
c) 他社の製品等の価値を下げる宣伝を行うこと等
ビジネスパートナーとは、アシックスの供給業者、請負業者(下請業者)、仲介業者、広告代理店、コンサルタントおよびその他のサービス提供業者をいいます。
競合企業との接触
競合企業間の接触および取り決めは、反トラスト法に抵触する場合があります。
アシックスの役員および従業員は、競合企業との(予定されている)接触および取り決めが反トラスト法に抵触すると疑われるときは、各社または各統括会社の法務部に相談しなければなりません。
競合企業との会合において、反トラスト法に反すると疑われるときには、アシックスの役員および従業員は、その場に留まってはなりません。
以下の1)、2)、3)および4)号は、違法な接触および取り決めの例です。実例を読んで、「取り決め」はただ単なる書面による正式な契約だけを対象としていないことに留意してください。口頭による協定、暗黙の了解や「紳士協定」も対象としています。
1) 価格操作
競合企業間の価格操作は、我々がビジネスを行う大半の国々で厳しく禁止されています。競合企業との間での価格の決定、低価格の引き上げを行う取り決めまたはただ一度の話し合いですら、価格操作とみなされ、違法です。リベートまたは割引、価格設定方法、コストや支払条件など間接的に価格に影響を与える競合企業間の取り決めまたは話し合いに関しても同様です。
2) 市場又は取引先の共有
競合企業間の市場共有または取引先共有の取り決めは、我々がビジネスを行う大半の国々で厳しく禁止されています。以下について合意することが禁止の対象です。
a) どの市場で販売し、どの市場で販売しないか
b) どの製品を販売し、どの製品を販売しないか
c) どの取引先に販売し、どの取引先に販売しないか
d) どのくらいの数量の製品を特定の市場または特定の取引先に販売するか
3)ボイコット
独立して行動する会社は、一般的にビジネスを行う相手を選ぶ権利を有します。ただし、2社以上が他の会社とビジネスを行わないことに合意する場合は、当該合意は反トラスト法に違反することがあります。
4)その他の禁じられる行為
上記の禁止事項に加え、以下に関して競合企業と情報を交換しないのがアシックスのポリシーです。
a) コスト、在庫レベル、消耗品または利益率
b) 特定の取引先との商取引
c) 今後の販売、マーケティング計画
d) 投資の可能性
e) 生産施設または生産能力
f) 取引先またはサプライヤーの分類
g) 市場占有率
h) 販売条件
i) 流通方法または経路
j) 通常機密とみなす情報
ただし、取引先、独立した市場調査機関または公的産業統計などの公的情報源から競合企業について情報を得ることができます。こうした情報源から競合企業情報を入手した場合、書類またはファイルに合法的な情報源を書き留めなければなりません。
競合企業との合法的なコミュニケーション
競合企業との接触または取り決めは、アシックスと競合企業との談合に見えるかもしれませんが、以下の活動に関連した競合企業とのコミュニケーションは許容されます。ただし、それが合法的な目的に適い、合法的な必要性があることを条件とします。
a) 事業者団体および職能団体
b) 業界標準化活動
c) 政府行為に影響を与えるための共同活動
d) 買収および合弁事業
e) 協業の取り決めおよび共同研究開発
これらの活動に関して競合企業とコミュニケーションを図る役員および従業員は、不適切に見える行動を避け、仕事上の接触およびコミュニケーションが適切な主題に限定されていることならびにこれらの活動の性質および範囲を記録するため適切な手順に従っていることを確実にするために各社または統括会社の法務部と協働しなければなりません。
その他の重要な注意事項
1) 再販価格維持
買主が商品を再販売する価格を売主がコントロールするか、コントロールしようとする場合に再販価格維持が生じます。再販価格維持は違法です。アシックスの販売代理店や小売店は、独自の再販価格を自由に決めることができなければなりません。アシックスは、販売代理店または小売店の再販価格に影響を与えることはできません。合法的なのは、推奨再販価格を提示することです。ただし、これらが固定再販価格または最低再販価格とならないような形でアシックスによって実施されることを条件とします。
2) 並行取引の制限およびインターネット販売の制限
販売代理店や小売店と商取引を行う場合も反トラスト法を遵守しなければなりません。特に注意が必要なのは「並行取引の制限」および「インターネット販売の制限」です。当該違反は、反トラスト当局により課される高額の罰金や販売代理店または小売店からの損害賠償請求を引き起こすことがあります。
3) 取引の終了
反トラストは、他の会社とビジネスを行わないと決定することを一般的に認めており、これには既存の取引を終了させる権利が含まれます。ただし、取引の終了により反トラスト法違反の疑いで損害賠償を求める訴訟を起こすことがよくあります。訴訟の根拠がほとんどない場合ですら、防御するのは困難であり、費用がかかります。従って、取引を終了させる前に終了の法的根拠があることを確かめ、訴訟のリスクを最小限にするために各社または各統括会社の法務部と協働しなくてはなりません。
競合企業または他の取引先との合意に起因する取引の終了は、一般的に反トラスト法違反となります。合意は間接的な証拠から推定されうるので、我々の取引先との関係について他の関係者とコミュニケーションを取るのを避けなければなりません。各取引先とビジネスを行うかどうか、どのような条件でビジネスを行うかを独自に決定するのがアシックスのポリシーであることを指摘し取引先の苦情に対して回答します。
推奨されるコミュニケーション
関わった行為が違法である場合は、慎重な言葉遣いであっても反トラスト法違反は避けられません。しかし、言葉の不適切な選択によって合法的にもかかわらず疑われる状況は、慎重な言葉遣いにより避けることができます。アシックスのコミュニケーションにおける不注意かつ不適切な言葉遣いは、反トラスト調査または訴訟における我々の立場に重大な悪影響を及ぼしかねません。
アシックスが政府当局によって調査される場合または第三者に提訴される場合、会社書類は証拠開示から完全に除外されるわけではありません。コミュニケーション不足または誤解の結果としての我々への損害のリスクを最小限にするために、常に常識を働かせて、話す前または何かを文書化する前に常に考えてください。
範囲
本ポリシーは、株式会社アシックスおよびその子会社、関連会社に適用されます。
アシックスは、不正競争に決して関与しないビジネスパートナーとのみビジネス上の関係を築きます。
アシックスおよびそのビジネスパートナーは、ビジネスまたは他の不適切な利益を獲得または保有するために直接的または間接的に不正競争に関与しません。不正競争は認められておらず、それ自体禁止されます。
全ての近代的な反トラスト法は、域外適用の効力を持っています。これは、こうした法律が世界中どこにいようとも、現地の基準や文化的規範では標準とみなされていようと関係なく、アシックスおよびビジネスパートナーの行為に適用されることを意味します。
従業員および経営陣の責任
世界中の全てのアシックスの役員および従業員は、本ポリシーを熟読し、完全に理解し、常に遵守しなければなりません。質問または疑問は、記録の保存および報告の章のb)項に従って送付しなければなりません。
経営陣には、アシックスのために働く全ての従業員および外部関係者が自らの責任の範囲内で確実に本ポリシーを理解し遵守するよう伝達する責任があります。
また、経営陣には従業員が本ポリシーを理解し、不正競争に関わる問題に対処できるよう訓練する責任があります。
ビジネスパートナー
ビジネスパートナーにとって、アシックスとのビジネスを得るため、またはアシックスに代わってサービスを得るためには、不正競争に従事しないことが極めて重要です。リスクの高い領域に厳密な適正評価を適用し、本ポリシーの遵守をアシックスと取引を行う条件とし、該当する場合には契約書に記載しなければなりません。
我々がビジネスパートナーのことを知り、彼らがアシックスに代わってする行為が反トラスト法に違反していないことを可能な限り確認することが重要です。
活動を行う際に不正競争に従事しないことが、アシックスのために、またはアシックスに代わってサービスを行うビジネスパートナーに求められる条件です。
リスク
本ポリシーの違反は、以下を含むもののこれに限られない厳しい制裁をアシックスへもたらすことがあります。
a) 当局は、多額の罰金をアシックスに課すことがあります。
b) 反トラスト法違反は、ステークホルダーに非倫理行為と受け止められ、アシックスグループのイメージおよび名声に重大な影響を与えかねず、最高水準のコーポレートガバナンスを遵守していると納得させる我々の能力にも影響を与えます。株価にも重大な影響を与えかねません。
c) アシックスおよびその役員、従業員は刑事罰を受ける可能性があります。この刑事罰には、アシックスおよびその役員、従業員に対する罰金ならびに懲役刑を含む可能性があります。
d) 我々の反トラスト行為で被害を被った競合企業、小売店、販売代理店、卸売業者だけでなく、消費者も、アシックスを提訴し、補償を求めることがあります。
e) 反トラスト法違反の契約上の規定は無効であり、裁判所で執行することはできません。さらに、特定の状況および地域においては契約全体も無効となることがあります。
違反の結果
本ポリシーの違反は、解雇を含む懲戒処分に至ることがあります。
記録の保存および報告
a) 記録される商取引の正確な性質に関して、会計帳簿を含む全ての正確な記録が、関連する社内規則に従い、保管されなければなりません。これらの記録は、明確かつ明白でなければなりません。
b) 全役員、従業員およびビジネスパートナーは、不正競争に気付いた場合には報告することが求められます。実際の違反または疑われる違反に気付いた場合、できる限り速やかに報告しなければなりません。これは、通常のレポートラインを通じて各社または各統括会社の法務部、内部監査室に連絡をとることにより行うことができます。このほか、グローバル内部通報ラインに連絡を取ることによっても報告することができます。グローバル内部通報ラインへの報告者は希望すれば匿名性を維持することができます。グローバル内部通報ラインへの連絡方法は「グローバル内部通報方針」に示されており、グローバル内部通報ラインへの全ての通報は「グローバル内部通報方針」に従って取り扱われます。
c) 違法行為を関係当局に報告し、その後の調査に全面的に協力するのがアシックスの基本姿勢です。
d) この章のb)項に基づき上記に直接報告される全ての事象は、検討され、必要に応じて調査されます。
e) 当該事象を効率的に評価できるよう、報告を行う前に個人のリスクを考慮に入れながら、できる限り多くの情報、証拠または関連書類を集めてください。
f) 内部通報をしたと思われる人に対する悪意ある報告やその他のいかなる種類の報復も容認されず、重大な不正行為とみなされます。アシックスの役員、従業員およびビジネスパートナーは、本ポリシーおよび「グローバル内部通報方針」に従い保護されます。内部通報の結果生じるハラスメント、脅迫または不当な扱いについて懸念がある場合は、この章のb)項に従って直ちに報告することができます。
コミュニケーションおよび教育
本ポリシーが十分に理解されるよう、コミュニケーションおよび教育を実施します。
モニタリングおよび検証
本ポリシーは、適合性、適切性、有効性を勘案して定期的にモニタリングされ検証されます。
グローバル反トラスト・競争方針 別紙
やるべきことおよびやってはいけないこと
1) 販売する取引先、市場、地域、製品および数量について、競合企業と協議、共有または合意しないこと。
2) サプライヤー/小売店との取引の拒否を競合企業と協議、共有または合意しないこと。当該決定は独自に行うこと。
3) 新規参入者を市場から締め出すことについて競合企業と協議、共有または合意しないこと。
4) ボイコット(販売拒否)または特定の取引先に不利な扱いを行うことについて競合企業と合意しないこと。
5) 上記1)、2)、3)、4)に関連して、競合企業と合意をしようとする競合企業または取引先の企てに気付いた場合は、記録の保存および報告の章のb)に従い直ちに報告すること。
6) 競合企業との直接的または間接的な違法な合意に基づくのではなく、独自の判断に基づき ビジネス上の決定を行うこと。
7) 取引先または公的な情報源もしくはインターネットの情報源以外から、競合企業の価格および販売条件に関する情報を入手してはならないこと。
8) 競合企業の前従業員から入手した情報は特に気を付けて使用すること。不正競争とみなされる恐れがある。
9) 競合企業が価格を上げた場合、その先例に従うことを競合企業に示さないこと。
10)競争および価格について話し合う場合は、特に注意を払うこと。間違った印象、すなわち、アシックスは積極的に競争していない、アシックスの価格は独自のビジネス上の判断以外の何かに基づいている、あるいはアシックスの公式声明は競合企業に対する「合図」である、を与えるのを避けること。
11)価格、前述のいずれかの事項、またはその他の企業機密情報を話し合うために競合企業が接触してきた場合は、直ちに会話を終了するとともに、当該事項について話し合えないことを明確にすること。
12)機密または違法な事項が話し合われている会合に出席している場合は、かかる話し合いに参加できないことを直ちに明確にするとともに、話し合いが続いている場合は、会合を退席し、議事録に退席およびその理由を確実に記録すること。
13) 競合企業または新規市場参入者に警告または脅迫を行わないこと。
14)競合企業の製品を誹謗しないこと。
15)小売店の再販価格に影響を与えないこと、または干渉しないこと、または推奨再販価格を正確に記載する場合を除いて、そうしているように見える書類を作成しないこと。
16)競合企業が商品を供給する価格について、小売店と協議または合意しないこと。
17)一定の水準以下に値引きしないこと、または小売店の原価以上の固定マージンを維持することについて小売店と協議または合意しないこと。
18)ディスカウント店であることを理由に小売店に供給を拒否しないこと。
19)製品を購入するために取引先に他の製品を購入するよう強要しないこと。
20)取引先が別個に入手することもできる場合以外は、2つの製品をパッケージとして一緒に販売しないこと。
21)販売店が独立していること、および彼らの我々に対する義務が代理店契約に規定されるものに限定されることに留意すること。
22)特定の取引先または特定のクラスの取引先に特別待遇が与えられているという誤解を避けること。