男女平等の課題に対するアシックスの姿勢について。さらに詳しく
お知らせ さらに詳しく

事例紹介/CASE STUDY

ダイバーシティ&インクルージョン 実践ケース
01:ものづくり技術者 × 研究者のワークショップ

ものづくり技術者(フットウェア カスタム生産部) × 研究者(スポーツ工学研究所) が未来に向けてタッグを組む

部署単位で考えれば、業務の徹底した効率化は生産性を向上させますが、一方で、部署同士の連携が少ない組織は、組織全体で見ると、決して生産性が高いとは言えません。お互いのコミュニケーションの不足により、知らずに同じような業務を個別で行ってしまうケースもあります。

アシックスでは、同じ建屋にいながら交流が限られていたフットウェア生産統括部カスタム生産部(以下カスタム生産部)と、スポーツ工学研究所(以下ISS)がそうした課題を抱えていました。それが変化の兆しを見せたのは、あるワークショップ開催がきっかけでした。

どのような経緯でワークショップは企画されたのか、連携強化につながった理由や開催後の変化などをワークショップ開催の関係者にお話を伺いました。


■フットウェア生産統括部カスタム生産部:
アスリートのコミュニケーションや定期的な計測、走行テストなどを通じて、選手のパフォーマンスを上げることに特化したシューズ作製を行う

■スポーツ工学研究所:
人間の運動動作に着目・分析し、独自に開発した素材や構造設計技術を用いて、イノベーティブな技術、製品、サービスを生み出す役割を担う



ワークショップ開催に至った経緯

カスタム生産部の将来を考え、FマネジャーはISSとの連携を上司に提案。互いの部署の仕事や強み、連携するメリットを理解するための、若手選抜社員によるワークショップ「カスタム × ISS workshop」の開催を決めました。

カスタム生産部・Fマネジャー(以下F) これまでモノづくりのノウハウを積み重ねてきた私たちカスタム生産部が、カスタムシューズを通じて会社の未来にどう貢献していくのかを考えた時、たとえばアスリートのパフォーマンス向上の裏付けとなるような、データの抽出や数値化などに強みを持つISSとの関係を深め、部門の垣根を超えた協力体制を築くことが必要だと考えました。ISSとは同じ建屋でありながら、お互いにどんなことに取り組んでいるのか、特に現場レベルでは理解し合えていない状況だったこともあり、そこも含めて上司に相談したのがワークショップ開催のきっかけです。すぐにISSの所長やTマネジャーから快諾の返事をいただき、前向きに捉えてくださったので、ワークショップ「カスタム × ISS workshop」のキックオフまでスムーズに進められました。

ISS・Tマネジャー(以下T) これまで2012年開催のロンドンオリンピックや2016年開催のリオオリンピックを通じて、カスタム生産部のメンバーがISSにアプローチしたり、逆にISSから研修の一環でカスタム生産部の現場を訪れたりと、両部署の関係は年々深まっていました。ISSにはないモノづくりのノウハウを持つカスタム生産部との連携に手応えを感じていましたし、2020年の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、さらなる協力体制を築きたいと考えていた時、ワークショップ開催の提案をいただきました。その時、二つのことが頭に浮かびました。1つは、これまで個々だったカスタム生産部との連携が本格化する流れが生まれたことへの期待。もう一つは、部署の垣根を超えたワークショップを若手社員に経験させること。部署の異なるメンバーとのコミュニケーションは彼らの成長にもつながりますので、こういった機会をいただいたことは非常にありがたかったです。


ワークショップを開催してみて

「カスタム × ISS workshop」に参加した、当時カスタム生産部のKとともに、Fマネジャー・Tマネジャーがワークショップ開催時を振り返りました。

F カスタム生産部を代表して今回のワークショップのメンバーに選抜されたKさんは、参加にあたって思うところはありましたか?

K これまで深く交流できていなかった ISSの研究員と話す機会が増えますので、参加するからには少しでもISSの知識や技術を部署に持ち帰りたいと思っていました。だから、選抜メンバーは3つのチームに分かれましたが、掛け持ちしてもよいとのことでしたので、私は2つのチームに参加することを決めました。

T そのうちの1つのチームは、グループワークの方向性がなかなか決まらなかったよね。

K 参加チームのうち、1つはカスタム生産部とISSの役割を入れ替え、お互いの仕事を理解しながら研究発表を進めようということで、最終報告会までスムーズに進んだのですが、もう1つのチームはメンバーそれぞれが発表でフォーカスしたいポイントを譲らなかったため、意見の衝突が多かったですね。

F Kさんも私に何度か相談しに来たよね。私は「メンバーをまとめる経験は少しでも早い方がいいよ」とアドバイスしましたが、Kさんの成長を考え、具体的な指示はあえて出しませんでした。その分、大変だったかもしれません。

K グループワークでは、自分の考えだけを押し通しても物事はうまく進まないことを痛感しましたが、それと同時に、本気でぶつかって議論することも大切だと思いました。全員が真剣だったからこそ、時間は掛かりましたが、納得できるディスカッションが増えました。ゴールに至るまでのアプローチは一つではないと、参加メンバー全員が実感できたと思います。

T 僕のところにもISSのメンバーから報告や相談があったけど、実は若手社員が意見をぶつけ合っていることに驚きました。というのも、若い子は良い意味でも悪い意味でもとても器用なので、言い争うことなどないだろうと勝手に思い込んでいたんです。でも、彼らは不器用なくらいに真っ直ぐで、自分たちの仕事に真剣で、意見の衝突も辞さない。それはいいことだと思いました。そこに気づいてから、今回のワークショップは「若い彼らにとっていい機会になる」と確信しました。


ワークショップ開催後の変化

ワークショップ開催後、KはISSに異動となり、カスタム生産部とISSのさらなる連携強化のための橋渡し役を担っています。また、ワークショップでの発表テーマの一つはISSのオフィシャル研究テーマに採用され、ビジネスにつなげていく動きが加速するなど、当初の目的以上の効果が出ています。

T ワークショップ開催後は、ISS研究員がカスタム生産部に相談する機会が増えました。同じ建屋ですので、研究員が自分のアイデアを、カスタム生産部での試作でスピーディに確認できるメリットは大きいですよね。今回のワークショップと直接関係はありませんが、このような部署間連携の代表とも言えるのが、カスタム生産部やISSはもちろん、プロモーション部や技術部、開発部などの部署が協力し合って生まれた、陸上の桐生祥秀選手のスパイクです。会社の規模が大きいと横の連携がしづらいと思われがちですが、インクルージョンの考え方を取り入れ、部署間連携の機会を増やすことで、よりよいモノが生まれることを多くの社員が共有できたと思います。また、今回のワークショップを通して、マネジャーの私自身も若手社員に対する自分の思い込みに縛られず、彼らの本質を理解した上でコミュニケーションを図ることの大切さに気づかされました。

F ISSからの試作の依頼は以前に比べて増えましたし、カスタム生産部からISSへシューズの機能評価などをお願いする機会も増えました。ISSの強みは私たちが考えていることを数値化するノウハウを持っていること。これまでの感覚的なモノづくりを数値化できるようになったことは、アスリートの安心や満足にもつながりますし、将来カスタム製品のインライン化を目指す上でも大きなメリットになるはずです。また、両部署にとって初の試みを、Kさんのような若手社員がリードしてくれました。ワークショップを通じて、彼らも大きく成長してくれたように思います。KさんはISSへ異動後、研究で得られた知見を具現化する重要な役割を担うとともに、両部署のパイプ役となり、コミュニケーションを円滑にしてくれていることも、うれしく感じています。

K ISSとカスタム生産部、それぞれの部署の社員から「これはカスタム生産部で試作できる?」「ISSの機械で評価できる?」といった相談を受けることがとても多くなったと感じています。これまでは「誰に聞けばいいのかわからない」という理由で、解決までに時間がかかっていた課題も、両部署が協働することで進められるようになりました。これからも2つの部署の仲介役となり、お互いが情報を共有しながら、強みを活かし合えるような協力体制を整えることに力を入れたいと思います。