生物多様性の分析報告

せいぶつたようせい

生物多様性に関する方針

アシックスは、アパレル・フットウエア業界が生物多様性に与える影響と自然資本への依存の重要性を認識し、リサイクル素材・水の使用量の少ない染色技術・再生紙の採用など、自然への影響と依存を低くする製品開発に取り組んでいます。

また、原材料調達を通じた生物多様性への影響を緩和するために、 Leather Working Group(以下、LWG)に加盟し、2030年までに森林破壊と土地転換のないレザーを100%調達するというLWGの目標に賛同しています。

LEAPアプローチに沿った分析

原材料についてアシックスはフットウエアをメインとした事業であり、調達量の大半を合成系原材料(合成ゴム、合成樹脂、ポリウレタン、ポリエステル)が占めています。生物多様性に特に影響のある、綿や天然皮革の調達量は限定的ですが、TNFD※1が発表した「TNFD提言」を参考に、2025年にLEAP分析※2を実施し、アシックスが自然に与える影響と自然への依存を把握しました。

※1 TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures: 自然関連財務情報開示タスクフォース)とは、自然に関係する依存関係、影響、リスクおよび機会を特定、評価、開示するためのガイダンスを企業に提供する世界的なイニシアティブです。これによって、企業は自然の保護と再生、生物多様性の対応の戦略を整合させています。
※2 LEAPアプローチは、TNFDが推奨する分析フレームワークです。アプローチにはLocate:発見、Evaluate:診断、Assess:評価、Prepare:準備、が含まれています。

アシックスにおけるLEAP分析結果サマリー

アシックスにおけるLEAP分析結果サマリー

Scoping

評価対象の選定

アシックスが調達するほぼすべての原材料について、バリューチェーン上流※1(Tier1~Tier4)※2を対象として評価を行いました。
なお、天然ゴム、非鉄金属、紙(バージン) については今回の調査において、調達量が限定的なため、対象外としました。
対象:①合成ゴム・合成樹脂 ②ポリウレタン ③ポリエステル ④天然皮革 ⑤リサイクル紙 ⑥綿

各原材料の主な使用用途

原材料
使用用途
合成ゴムフットウエア製品の外底
合成樹脂フットウエア製品のミッドソール・中敷
ポリウレタンフットウエア製品の中敷
アッパーのスポンジ材料
ポリエステルフットウエア製品のアッパー材料
アパレルの素材
天然皮革一部フットウエア製品のアッパー材料
リサイクル紙シューズボックス
下げ札
綿アパレルの素材
一部フットウエア製品のアッパー材料

※1 ENCORE での分析の結果、上流・自社・下流のうち上流(特にTier4)における自然への依存・影響度が大きいことが分かったため、バリューチェーン上流のみを評価の対象としました。
※2 Tier 1: 製造委託先工場、Tier 2: 材料サプライヤー、Tier 3・Tier 4: 原材料サプライヤー

(参考)ENCOREの評価結果

ENCORE調査結果のヒートマップ

図表内*
・合成ゴム/合成樹脂/ポリウレタン/ポリエステル
・合成系原材料の生産における石油生産については、トレーサビリティ、及び対応策やエンゲージメントが困難であるため分析対象外としています。


分析に用いたツールおよびデータ

LEAP アプローチの各ステップにおいて、ENCORE, Materials Impact Explorer などのツールに加え、 Natural History Museum, AQUEDUCT などが提供するオープンデータを参照しました。
参照ツール・データ:
ENCORE, Materials Impact Explorer, Natural History Museum “Biodiversity Intactness Index”, AQUEDUCT ”Baseline Water Stress”, Mair et.al, 2021 ”STARt, STARr”, Yoo et.al, 2025 “industrial land”, FAO “GLW4”, Tan et.al, 2024 “CROPGRIDS”

Locate

自然関連の課題は地域ごとに大きく異なるため、TNFD 提言では事業活動の「場所」を特定し、地域性を考慮することが重要であるとされています。そこで、アシックスにとって重要な自然関連への依存、影響とリスク、機会を特定したマテリアルな地域とアシックスのバリューチェーンにおける活動が自然と接する要注意地域をそれぞれ識別し、優先地域としました。

アシックスの事業活動の位置情報の特定
対象原材料のバリューチェーン上流に関する地理的位置情報は現時点で一部に限られるため、直接取得した一次情報に加え、外部データにより推定された二次情報も活用しました。

以下の拠点については、一次情報である所在地の位置情報を把握しており、所在地を中心とする約10 ㎞四方のグリッドを分析対象地域としました。

・フットウエア・アパレル製造委託先工場(Tier1)
・上記委託先の調達先である一部原材料加工工場(Tier2)
・ 天然皮革の皮なめし工場(LWG 認証サプライヤー)

    一次情報が特定できない以下の原材料については、既知の原材料生産国、または、サプライヤー所在国の主要輸入先国を対象に、外部データを用いて生産国における生産地を推定し、分析対象地域としました。

    ・ 合成系原材料(一次形態の製造)
    ・ 天然皮革(牛の飼育)
    ・ 綿(綿花栽培・紡績加工)
    ・ リサイクル紙(リサイクルパルプ製造)

    自然への影響または依存が懸念される地域の特定
    バリューチェーン上流の分析対象地域において、どの場所が自然への影響または依存が懸念される地域かを特定するために、TNFD 提言の中で要注意地域に該当するとされる以下の指標についてGIS(地理情報システム)を用いて約5 ㎞グリッド単位で分析しました。

    ・生物多様性の重要性
    STARr がHigh 以上
    (絶滅危惧種の保全がより効果的な地域)
     STARt がHigh 以上
    (より危機的な絶滅危惧種が多く生息する地域)

    ・生態系の完全性
     現在のBII が90%以上
    (現時点で生態系の完全性が高い地域)
     過去20 年のBII 減少幅が10%以上
    (生態系の完全性が急速に減少している地域)

    ・物理的な水リスク
     AQUEDUCT 水ストレスがHigh 以上
    (水の供給に対して需要がひっ迫する地域)

        優先地域の特定

        アシックスの事業活動の位置情報と自然への影響または依存が懸念される地域を重ね合わせ、分析した結果、優先地域として以下の国・原材料が特定されました。なお、いずれも二次情報を利用して推定した結果であり、当該国の原材料を使用していることを示すものではありません。

        ・ 合成系原材料(一次形態の製造):タイ、マレーシア、インドネシア、台湾、ベトナム
        ・ 天然皮革(牛の飼育):ブラジル、アメリカ
        ・ 綿(綿花栽培):パキスタン、オーストラリア
        ・ 綿(紡績加工):スリランカ、ベトナム
        ・ リサイクル紙(リサイクルパルプ製造):ベトナム、スリランカ

        位置情報の一次情報を活用して分析を行った、フットウエア製造委託先や皮なめし工場については、ENCORE やLWG 認証などの評価に基づき、現時点では優先地域には該当しないと判断しています。
        ただし、今後もサプライチェーン全体における環境負荷の把握と低減に、継続して取り組んでいきます。

        Evaluate&Assess

        Locate で特定した各優先地域での原材料生産プロセスについて、ENCORE のH 以上の依存・影響をリスト化し、Materials Impact Explorer の評価結果、優先地域の絞り込みに使用した閾値、ステークホルダーからの関心などを考慮し、自然への依存と影響度を複合的に評価しました。
        その結果、依存に関しては、乾燥地域における綿花栽培が水供給に依存していることとそれに起因する物理リスクが特に重要であると評価されました。影響に関しては、綿花栽培と牛の飼育による森林破壊への影響や、綿の紡績・紡布・仕上工程における染色に伴う流域の水質汚染、合成系原材料の一次形態製造による水質汚染・大気汚染が注視すべき課題であると評価されました。なお、リサイクル紙については、重要な依存・影響がないと評価されました。


        分析結果の戦略への反映

        まずは、調達量の多い、合成系原材料への取組を最優先とし、引き続きステークホルダーと連携してまいります。また、在庫の適正管理・適正な原料使用・認証原材料の調達・製品寿命の向上などの取組を行ってまいります。
        綿・天然皮革については、調達量は限定的ではあるものの、今回特定したリスクへの対応として、トレーサビリティをさらに向上させ、認証原材料の調達や水使用量の少ない染色技術の採用などに引き続き取り組んでまいります。

        また、今回は二次情報を利用して特定した地域もあるため、原材料のトレーサビリティを向上し、より詳細な目標・取組内容・期限の設定については、必要性を含め、検討してまいります。

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