PROJECT STORY #02
時間と距離の障壁を
超えて。
ワンチームで
新たな価値を創り出す
GEL-QUANTUM 360™ VIII
(ゲルクォンタム)
開発ストーリー
Z.D(スポーツスタイル統括部
プロダクトマネジメント部 2015年入社)
R.K(スポーツスタイル統括部
デザイン部 2014年入社)
K.N(スポーツスタイル統括部
開発部 2015年入社)
E.M(スポーツスタイル統括部
マーケティングチーム2023年入社)
スポーツスタイルからの新たな提案
——本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは今回のプロジェクトにおけるそれぞれの役割について教えてください。
E.M:私たち4名が所属している「スポーツスタイル」は2019年に創設されたカテゴリーで、アシックスがスポーツで培ったテクノロジーをライフスタイルに落とし込み、お客様がよりアクティブな生活を送れるようにというビジョンを掲げています。今回の GEL-QUANTUM 360™ VIIIは、そんなスポーツスタイルを牽引していくプロダクトで、ソールに360度ゲルがついているのも特徴のひとつ。意匠としてだけではなく、実際にクッション性も高く、スポーツスタイルのラインナップのなかでもテクノロジーが詰まったモデルになっています。
Z.D:「GEL-QUANTUM 360™ VIII」のプロダクトマネージメント(以下、PM)を担当しました。コアコンセプトを定め、マーケットのニーズとアシックスのものづくりをどう紐づけるかが私の役割。PMになって初めてのプロジェクトであり、なおかつマイナーチェンジではなくフルモデルチェンジだったので、関われること自体にわくわくしていましたね。ちなみに今回の開発コンセプトは、GEL-QUANTUM の過去のレガシーを受け継ぎつつ、ジェンダーレスなものにアップデートすることでした。
R.K:彼が考えてくれたコアコンセプトをもとに、どういうデザインに仕上げていくのかを考えるのが私の役割です。デザインと聞くと外観や装飾といったイメージが強いかもしれませんが、GEL-QUANTUM 360™ VIIIはそこにどんな機能を持たせるか——たとえばソールや内部構造に至るまでを、プロジェクトメンバーでコミュニケーションを取りながら詰めていきました。フルモデルチェンジかつスポーツスタイルを代表するアイテムの1つだったのでプレッシャーはかなりありましたね。
K.N:あがってきた二次元のデザインを三次元に落とし込んでいく開発を担当しました。例えば工場に具体的な仕様をオーダーしたり、技術部や品質管理部といった関係者とコミュニケーションをとったり。いっぽうでGEL-QUANTUM™ 360 VIIIはスポーツスタイルの中でも特にテクノロジーを搭載しているモデルなので、ISS(アシックススポーツ工学研究所)とやりとりしたりと業務内容はとにかく多岐に渡ります。そうしたいくつものやりとりを経て、繰り返しサンプルをつくって量産につなげていくんです。
E.M:マーケティングチームでPRの担当をしています。私の役割ですとものづくりの過程よりも生産後にたくさんの方に手に取っていただくにはどうすればいいのかを考える部分がメインの役割ですね。具体的にはプレスリリースの作成をしたり、昨年6月からグローバルイベントとしてスタートしたパリのファッションウィークのイベントの担当者として仕込みを行ったり。あとはメディアなどとの取り組みの枠組みを作ることも仕事のひとつです。そうしたいくつもの施策を、日本、ヨーロッパ、アメリカ、韓国、中国などの世界中のメンバーと連携を取りながら発信していくんです。
プロジェクトに課された3つのミッション
——開発からローンチまでのおおまかな流れを教えてください。
Z.D:毎年、各部署が集まるオフサイトミーティングというミーティングが行われるんです。テーマは「2年後にどんな商品を市場に生み出すか」。そこで決まった方針をもとに私たちも動き出すわけです。ちなみに今回のプロジェクトにおけるミッションは大きく3つありました。1つ目はヨーロッパとオーストラリアがメインマーケットだったGEL-QUANTUM を、より多くの人たちに届けること。2つ目はすでに愛用してくれている人に、新しい驚きや感動を提供すること。そして3つ目は、プロダクトのデザインはもちろん、アッパーやソールのディテールや機能性にもこだわることです。
R.K:私たちが具体的に動き出したのは2022年の春から夏にかけてですね。デザインのポイントになったのがゲルとミッドソール、ヒール部に統一感を持たせるため、流れるようなラインを使用したデザインです。今までのGEL-QUANTUM ファンはもちろん、まだ手に取ってもらえていないお客様にも受け入れてもらえるような優しく流れるようなスタイリングを意識してデザインしているんです。
K.N:デザインにGOサインが出たら、サンプル作製に移ります。通常、1ST、2ND、3RDといった具合にサンプルをその都度作製するのですが、今回はゲル部分の構造が複雑なことや、フルモデルチェンジということもあり1STの前にプロトサンプルも作っています。
プロトサンプルができあがったのは2022年の夏ぐらいでしたね。上手くいけば約1年後には3RDサンプルが完成し量産する工程に移るのですが…3RDサンプル発注直前になって、海外オフィスのメンバーからデザインに関するリクエストがきたんです。
R.K:変更内容はシームレスで流れるようなソールの形状を、「前作同様にブロック形状にしてほしい」というもの。プロジェクトでいえばかなり終盤。けっこうひやひやしましたね。
GEL-QUANTUM は代々続いているアイテムでもあるので、「フルモデルチェンジとはいえ、変えすぎてしまうと市場で受け入れてもらえないのではないか」という懸念が彼らのなかにあったんです。時間的にはシビアでしたが、リクエストに対して、メンバーと議論し、サンプルに落とし込みながら、全体のバランスを調整していきました。
K.N:今回のプロジェクトでは、スポーツスタイルでは初採用となるミッドソール素材を、クッション性向上のために GEL-QUANTUM 360™ VIII に採用しているんです。ただしこの材料はコストがかかる。新しいクォンタムにはベストな選択だと思い私から提案させてもらったのですが、機能性の追求とコスト管理のバランスにはいつも頭を悩まされますね(笑)。今回のようにメンバーと闊達に議論しながら、よりよい製品を実現させるために様々な提案をするのも開発の仕事のひとつなんです。3RDサンプルができたらいよいよ量産に入るわけですが、あとは「お客様にしっかり届くように!」と祈るばかりです(笑)。
E.M:開発メンバーの想いが詰まったプロダクトをお客様にしっかりと届けるために、商品のペルソナを考え、メディアなどを介し、どのような手法で訴求していくか、そこをマーケティング・PRとして伝えていく…今回みなさんの話を聞いてさらに気が引き締まりました(笑)。先ほどもメンバーが申し上げた通り、コアマーケットであるヨーロッパやオーストラリア以外でどうやって広げていくかも検討しなくてはいけません。また、GEL-QUANTUM は、今後も続くシリーズとなるため、次回のローンチに向け、ストーリーを検討しつつ、パリのファッションウィークのポップアップなども含め、PR周りでどの様にハイライトしていくかを検討しています。
距離と時差を感じさせない開発環境
——プロジェクトを進めていくうえで、日本とアメリカとの距離は障壁にはならなかったのでしょうか?
Z.D:私が働いていのはアメリカのボストンです。日本との時差に最初は戸惑いましたが、時差のあるミーティングはアシックス社内で割と頻繁に行われているのですぐに慣れました。
E.M:マーケティングチームは、ヨーロッパやアメリカのチームとやりとりすることが多いんです。遅いときだとミーティングのスタート時間は夜の11時からなんてことも。でもアシックスはフレックス制度を導入しているので、事前にミーティングが入っているのが分かっていれば出社時間を自由に設定できるんです。会社がしっかりとルールを定めてくれているので時差や距離感での苦労はさほどないですね。
R.K:デザインではむしろ効率がよいという側面もあるんです。私が日本時間の夕方にデザインを提出すれば、私が寝ている間にフィードバックがもらえる。翌日出社したらそのフィードバックをもとにアップデートするというふうに、常にプロジェクトを進行することができるんです。
K.N:今回のプロジェクトもそうですが、すべてオンラインというわけではないんですよね。しっかりとしたコミュニケーションをとるときは、直接会って話をしていますし。サンプルが完成したタイミングで、アメリカにいるPMチームも含めたメンバーみんなが集まってその場で議論しているんですよ。
仕事の端々で感じる“アシックスらしさ”
——みなさんの仕事におけるやりがいや、今後の目標についても聞かせてください。
Z.D:今回初めてPMを務めたことでいろんな職種のメンバーと仕事ができ、自分自身がものすごく成長できたと感じています。アシックスのものづくりのすべてのプロセスに関われたのも大きな収穫でした。この知見は今後のキャリアでも活かされていくと思います。また今回のシューズ開発では、お客様から履き心地について褒められることが多かったのですが、自分がこだわったところがリアルに評価されるのはうれしいですね。
K.N:実は発売日に店頭に足を運んだのですが、お店の目立つ位置に GEL-QUANTUM 360™ VIIIが配置されていたり、店舗スタッフが早速履いてくれていて思わずうれしくなりました。みんなでコミュニケーションをとりながら作ったものを日常で見たときは、やっててよかったなと感じますね。今回の GEL-QUANTUM 360™ VIIIはフルモデルチェンジということもあって他商品よりもディスカッションの回数が多かったので、まるでわが子の晴れ舞台を見ているようです(笑)。
一同:同感です!(笑)
Z.D:アシックスはグローバル企業なので、いろんな人とつながりながら仕事ができるのがいいですね。企画から開発に至るまで細かくディスカッションをして、機能性に妥協をしないところもアシックスらしいな、と。
K.N:ものづくりの姿勢はまさに私もそう感じます。外観には見えていないですが、商品の内部構造で、実は特許の出願もしていたりするんです。そして所属部署問わず、みんなが「いいものをつくりたい」と思い、固定概念にとらわれずにものづくりを行っているところもアシックスらしい。先輩たちに新しいアイデア等を相談しても、一緒に足並みを揃えて検討してくれるんです。
E.M:アシックスらしさは「人」にもありますよね。個々のスキルの高さはもちろんですが、本社だけでなく、海外オフィスのメンバーも含めた世界各国のメンバーがワンチームとして働く社風がある。本社の独断でリードするのではなく、様々な部署や海外オフィスのメンバーとも対話をしながら並走していくイメージでしょうか。
K.N:すごくよくわかります。
Z.D:今後の目標としては、世の中のトレンドをつくるような商品を生み出したいですね。アシックスは海外メディア『HYPEBEAST (ハイプビースト)』でブランドオブザイヤーを2年連続受賞しているので、これからもお客様の選択肢の第一候補にあがってくるようなブランドであり続けたいです。
K.N:私自身、2019年から複数の部署を兼任していることもあって、開発だけでなくいろんな部署からの視点、ビジネス、ものづくりを考える機会が増えています。だからこそできる様々な視点を活かした開発をやっていきたいです。アシックスに入社して約10年になりますが、未だに底が見えないほどシューズの世界は奥深いんですよ。スポーツスタイルカテゴリーとしても、お客様にとって新しい価値や体験を創造していきたいですね。
E.M:スポーツスタイルは先ほども話した通り、2019年に新設されたカテゴリー。コロナの間の自粛期間は行える活動も限られていたのですが、コロナも明け、ブランディングにも力を入れはじめました。お客様がプロダクト単位ではなく、ブランドとして選びたくなる様に、商品のPRと共にブランドを伝える様々な手法でPRを行っていくことが現在のチャレンジです。
R.K:機能性の追求も重要ですが、デザイナーである以上、一目見てカッコよいと思えるもの、クールなものをこれからも突き詰めたいです。そしていろんな視点でカテゴリーを超えてコミュニケーションをとり、アシックス全体が成長できるような役割が担えたらとも考えています。ちなみにアシックスは、入社年月に関わらずチャレンジさせてもらえる社風がある。「新しいことをはじめたい」「挑戦したい」と考えている人にとってはぴったりの会社ではないでしょうか。私も入社して驚いたんですが、想像以上に海外メンバーとのやりとりが多く、人、文化、いろんな考え方を知ることが出来るのもいいですね。
Z.D:私自身、入社当時のオーストラリアオフィスから異動し、グローバルのチームメンバーとしてボストンで働いているなんて想像すらしていなかったですから(笑)。
E.M:スポーツスタイルは、カルチャーと密接なカテゴリー。スポーツはもちろんのこと、ファッション、アート、ミュージックを反映してPRやマーケティングキャンペーンを行うので、スポーツブランドでありながら、様々な業界につながれるのは魅力です。
K.N:私はスポーツが好き、シューズが好き、ものづくりが好きでこの会社に入社しました。好きなことを仕事にするのは大変な側面ももちろんありますが、好きなことだからこそ頑張れる。10年経った今もそう思えているのが何よりの証拠かもしれませんね。もしこの記事を読んでちょっとでも興味をもったら、ぜひアシックスのドアを叩いてもらえるとうれしいです。
*記載内容は取材当時のものです。