PROJECT STORY #01

M.M(経営企画部2009年入社)
A.T(広報部2018年入社)
S.K(経営企画部2019年入社)

左から、S.K(経営企画部2019年入社)
A.T(広報部2018年入社)
M.M(経営企画部2009年入社)

10年後のアシックスを考えよう

M.M:「VISION2030」は私たち経営企画部のメンバーを中心に、2020年に策定したアシックスの長期ビジョンです。主なコンセプトはパフォーマンスを追求するアスリートに向けたこれまで通りのサポートに加えて、スポーツや運動を通じて誰もが一生涯、心身ともに健康であり続けられる世界の実現を目指そうというもの。策定プロジェクトは2019年末から動き始めたのですが、すぐコロナ禍になったこともあり、多くの人が健康の大切さに気付かされたタイミングでもありました。そうした外部環境の変化もふまえて、スポーツや運動を中心にビジネスを展開してきたアシックスとして社会に貢献できることは何か、という観点から構想したものになります。

S.K:アシックスにはもともと「健全な身体に健全な精神があれかし」という創業哲学があります。そこにあらためて立ち返りつつ、新しい時代に合わせた会社の在り方を考えていこうというプロジェクトだと言えますね。

A.T:弊社としては5年ごと(現在は3年ごと)の中期経営計画という指標はあったのですが、より長い目で会社の在り方や方向性を掲げたビジョンは、当時持っていませんでした。そうした背景もVISION2030策定のきっかけになっていたと思います。

若手中心でプロジェクトチームを結成

M.M:VISION2030の策定にあたっては、まずは私が担当になることが決まっていました。以前、若手・中堅社員で将来のアシックスについて考える「BEYOND2020」というプロジェクトにアサインされていたこともあって、引き続きビジョン作りに関わることになったというのが経緯です。ただ私はひとりではなくチームで動きたいと考えていたので、A.Tさん、S.Kさんと組みたいと上司にお願いしたんです。

A.T:そうだったんですね!初めて聞きました。

M.M:何でもそつなくこなせて、ロジカルな思考を持っているA.Tさん。当時まだ新入社員でしたが、お客様に最も近い視点を持っていたS.Kさん。この2人なら私にない部分をカバーしてくれて、なおかつフレッシュな価値観を提供してくれるのではと期待しての人選です。今思うと、私の目は間違っていませんでしたね(笑)。

A.T:うれしいです(笑)。私は当時入社して1年半ほどだったのですが、日頃から「いろいろな部署の方と関われる仕事がしたい」と言っていたので、そのアピールが功を奏したのかもしれません。私は地元が神戸だったので、バレーボール部だった学生時代はずっと、全身アシックスのアイテムを使っていたんです。そんな私がアシックスのビジョンを考える立場になれるなんて、光栄な反面、プレッシャーもありましたね。

S.K:私はまだ新人研修的な業務を行っていた状況で、こんな大きなプロジェクトにお声がけをいただいて正直びっくりしました。とはいえ、良くも悪くも何も分からない立場だったこともあり、A.Tさんとは逆でむしろワクワクしていた記憶があります。

社員みんなを巻き込みたい

M.M:中心となるメンバーはこうして決まったんですが、今回のビジョンは私たち3人だけではなく、多くの社員を巻き込んで考えていくことが理想だと考えていました。

A.T:経営企画部の中だけで決めたビジョンでは、他の社員の興味や共感を得られないし、みんなで同じ方向を向くことはできないだろうという話をしていたんです。

S.K:できるだけたくさんの社員に「VISION2030には自分も関わったんだ」と思ってもらいたいというのが私たち3人の共通した意見でしたね。

M.M:そこで実施したのが、社内アンケートとディスカッションです。まずアンケートで「10年後の社会はどうなっていると思うか」「そのときアシックスで何がしたいか」という質問にオンラインのフォームで回答してもらいました。そこで集まったたくさんの意見をもとにして、ビジョンの草案を作ったんです。

A.T:草案は中間発表という形で社内に共有しました。社員のみなさんに引き続きプロジェクトへの参加意識を感じてもらえるように、アンケートを回収して終わりにはせず、しっかり進捗状況を見せていこうと考えたんです。

M.M:次にその草案について、私たちプロジェクトチームと社員でディスカッションする場を設けました。参加希望者を募るために、掲示板や朝礼、さらには社長からも社員宛てにメールを打っていただき、あらゆる手段で告知をしました。ディスカッションについてもそうですが、VISION2030というプロジェクトが動いていること自体をあらためて認識してもらう上で、このアナウンスはとても重要だったと思います。結果として、応募者数はこちらの予想を大きく上回って落選者が出るほど。最終的に10グループに分けて開催することになったのですが、所属部署やそれぞれの立場を超えて、率直な意見を交わせる貴重な機会になりました。

暗中模索の日々と光が見えた瞬間

S.K:ここから最終的なビジョン策定へと進んでいくんですが、私たちの案に上司からのOKがもらえない時期が続きましたよね。その都度、議論が行ったり来たりして、ゴールが100だとしたら今どの辺りにいるのかも分からず、不安になることがありました。

M.M:たしかにプロジェクト中盤は本当に苦労しましたね。でも今振り返ると、上司がOKを出せなかったのは、私たちから自信がなさそうな雰囲気や迷いが見てとれたからじゃないかなと思うんです。それがあるときから「私たちはこれがいいと思います!」と胸を張って提案できるようになった。おそらく「このビジョンには社員みんなの意見や思いが詰まっているんだ」ということを再確認したからだと思います。全社一丸で取り組んでいるプロジェクトだという意識が、私たちを後押ししてくれたんです。

A.T:ゴールへの手応えを感じたという意味では、今後のアシックスの柱となる事業ドメイン(事業領域)を決める過程が印象に残っています。

M.M:たしかに!

S.K:あれ、大変でしたからね。

A.T:「個々のお客様にパーソナライズしたプロダクトの提供」「いつでもどこでもスポーツができる場所の提供」「お客様の分析に基づいた最適な運動プログラムの提供」という3つの領域を策定したのですが、これを端的に表現するフレーズが必要だったんです。でもピタッと言い表したワードに変換することがなかなかできませんでした。何度も上司や社長にチェックしてもらったんですが、「言いたいことは間違ってないんだけど...」という反応がずっと続いて。

S.K:3人で何百というワードを出し合っては、何度も検討を繰り返しましたよね。最後はみんなが出したワードを上手に組み合わせながら、「プロダクト」「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス」というのが採用となったんです。

A.T:ちゃんと韻も踏んでいて、2つのワードがワンセットになるように工夫しました。ハマったときは「来た!」って思いましたね。今ではこの言葉をいろいろな部署の社員が普通に使ってくれていて、とても感慨深いです。

VISION2030の策定はゴールにあらず

M.M:手探りの時期もあったのですが、プロジェクト始動から1年弱でVISION2030を形にすることができ、2020年10月には社外に向けて発信しました。

S.K:入社前からアシックスの創業哲学に共感していたので、あらためて「心と身体の健康」にフォーカスしたビジョンを策定でき、個人的にもやりがいと達成感がありました。策定から1年半ほど経ちますが、部署の垣根を超えてVISION2030が社内に浸透していることがうれしいです。

A.T:私は昨年広報部に異動になって外部の方と関わる機会が増えたんですが、VISION2030をご存知の方がたくさんいらっしゃって、社外にも広まっていることを実感しています。策定作業においては、様々な部署の社員の意見をたくさん聞けたことが大きな収穫でした。この経験はどんな業務においても生かせると思います。あとは2030年が訪れたときに、本当にこのビジョンが達成できているか、ですね。ビジョンを策定できたときは満足感がありましたが、「これからが本当に大事」という気持ちにもなりました。

M.M:現時点のVISION2030はアシックスのマクロな将来像を提示したものなので、その実現のために自分自身は何をすればいいのか、というところまでは明確に見えづらいかもしれません。次の段階では、このビジョンをもっと噛み砕いて、あらゆる部署の社員ひとりひとりが「2030年までに何をすべきか」を具体的に思い描ける状況にしたいと考えています。それをVISION2030の“ゴールイメージ”と称して、まさに今、S.Kさんも含めた経営企画部のメンバーで内容を調整しているところです。

S.K:VISION2030の達成には、他社との協働や新しい領域での事業展開も必要だと認識しています。ゴールイメージの策定と並行して、社内から新規ビジネスのアイデアを募って実現させようというプロジェクトも進めています。

大きな絵を描いたあとに

S.K:私たちのこれからの目標や展望としては、2030年までに「健康ならアシックス」と言っていただける企業にしたいというのがあります。そのために必要な新しい発想やビジネスをしっかりサポートして、活発で持続的な成長を続けるアシックスの姿をお見せできるよう頑張っていきたいです。

A.T:私は年齢、性別などに関係なく、すべての人が運動やスポーツに親しみ、心も身体もハッピーでいられるというのが理想の世界だと思います。今、アシックスのサービス事業は日本国内での展開にとどまっているんですが、今後はプロダクトだけでなくサービスもグローバルに提供して、健康で幸せな世界にしていけるような貢献ができればと考えています。

M.M:世の中の人々に向けた提供価値については、まさにふたりの意見に尽きますね。一方でVISION2030策定のポイントは、社員みんなに同じ方向を向いてもらうことにもあります。VISION2030が旗印となることで、これまで以上にひとりひとりの社員がアシックスで働くことに誇りが持てる、そんな会社にしたいと思っています。そのためには具体性と実現性のあるゴールイメージを策定し、社員一丸となってビジョン通りの2030年を迎えたいですね。

*記載内容は取材当時のものです。