フットウエア業界初 マサチューセッツ工科大学と環境負荷低減で共同プロジェクトを推進 ―アシックス 中期サステナビリティ戦略を策定-
2012.04.25 PRESS株式会社アシックス(本社:神戸市、社長:尾山基)は、持続可能な社会の実現に向け、このたび、マサチューセッツ工科大学(アメリカ合衆国、以下MIT)と、フットウエアの生産活動におけるCO2削減に関する研究を共同で進め、信頼性の高い研究結果を得ることができました。これを受け、アシックスグループ全体で環境経営を積極的に推進するため、新たに2015年に向けた中期サステナビリティ戦略を策定しました。
このプロジェクトは2010年8月から進めており、環境負荷低減に関するMITとの共同研究はフットウエア業界で初となります。
当社は、環境への取り組みを経営の重要課題と位置付け、これまで設けていた独自基準の開発をさらに高いレベルの取り組みとするため、産業と学問の域を超え、多くのグローバル企業の環境分析を手がけるなど高い知見を有するMITの賛同を得、共同研究プロジェクトを進めてきました。このたびの研究では、バリューチェーン
※1. 全体にわたってCO2排出量を測定し、その中でも環境負荷の高い製造工程に着目しました。その結果、高い機能を保ったままでシューズの生産活動における環境負荷の低減に成功しました。
アシックスグループでは、今後もこの産学共同研究プロジェクトの成果をもとに、フットウエア生産活動における環境負荷の低減に努め、持続可能な社会の実現を目指します。
※2. バリューチェーン:製品の原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄にいたるまでの一連の活動および工程
共同研究の取り組み概要
<測定・分析結果>
- ランニングシューズ1足あたりのバリューチェーン全体におけるCO2排出量は約14kg※2
- 原材料調達段階と、製造段階においての環境負荷が最も高い。特に製造段階は全体の約68%を占める。
- 足が完成するまでの平均部品数は約65パーツ、平均製造工程数は約360工程
検証商品:GEL-KAYANO17(ゲルカヤノ17)
※2 100ワットの電球を1週間継続使用した場合のCO2排出量と同等。
<分析結果に基づく改善策>
MITの知見を生かした改善策のCO2削減量の定量化結果を受け、アシックスは以下の方策によるフットウエア生産活動の改善を推進します。
- ソール(底)部品の統合
- アッパー(甲被)部品の統合
- 軽量化材料の使用
- ソール(底)部品の材料や製造工程の変更
- リサイクル材等CO2排出量の少ない材料の採用
- 部品の削減
- 包装材の削減
MITのコメント:
今回のアシックスとMITの共同研究により、産業と学問の双方において、持続可能な製品デザインと製造の分野への貢献につながったと感じています。
プロジェクトでは、アシックスや製造委託先工場との活発なやり取りを通じて、CO2排出量の高い削減が見込める箇所の特定に不可欠な、詳細な活動データを収集することができました。
研究の視点では、このような種類の製品では比較的製造段階での環境負荷が高いという特徴がある、という重要な見識を得ることができました。
(Materials Systems Laboratory, MIT)
参照:
学術論文
“Manufacturing-Focused Emissions Reductions in Footwear Production”
http://ssrn.com/abstract=2034336
“LCA streamlining of manufacturing impact, a case study of running shoes”
The International Symposium on Sustainable Systems and Technology
アシックス サステナビリティ中期戦略について
今回の研究結果をふまえ当社が策定した、アシックスグループ全体および中核事業であるフットウエア事業における2015年に向けた中期サステナビリティ戦略の概要は以下の通りです。
アシックスグループ重点目標
・温室効果ガス(CO2)の削減 10%※3
・化学物質管理の継続的強化
・業界をリードするサスティナブルな製造工程の研究、開発
フットウエア目標
- 製品全体
- 1-1 業界の環境指標の順次適用
- 1-2 グローバルの評価基準の設定
- 1-3 環境配慮型商品の売上高占有率 35%※4
- 1-4 化学物質管理の継続的強化
- 材料調達
- 2-1 環境配慮型素材の採用
- 2-2 業界をリードするサスティナブルな材料の研究、開発
- 製造工程
- 3-1 直接取引工場の温室効果ガス(CO2)、水、廃棄物の削減 1足あたり10%削減(2009年比)※5
- 3-2 環境配慮型接着剤(水溶性接着剤)の採用促進 生産量の60%以上
- 3-3 業界をリードするサスティナブルな製造工程の研究、開発
- 3-4 業務委託先工場の労働慣行管理の強化
- 包装資材・輸送
- 4-1 包装資材の重量削減、リサイクル材の採用
- 4-2 物流拠点の集約化による温室効果ガス(CO2)削減
- 製品輸送コンテナの容積率向上 85%以上※6
- ※3 対象範囲:事業所、フットウエアの製造工程および輸送
- ※4 2013年度目標。対象:国内売上高
- ※5 生産量の多い製品を重点的に取り組む
- ※6 対象:国内向け出荷
本プロジェクトの研究結果を採用した商品の展開
この研究によって得られた成果を盛り込み、CO2排出量の約20%削減※7に成功したランニングシューズ「GEL-KAYANO18(ゲルカヤノ18)」の2012年秋冬モデル(新色)を、2012年5月からグローバルで順次展開します。従来の品質や機能はそのままで、原材料にCO2排出量が少ないリサイクルポリエステル素材を採用、アウターソール(外底)のプレス工程の変更、アッパー(甲被)部分の抜き型統合など製造工程を改良しています。
- 1) リサイクルポリエステル素材の採用
- 2) アウターソール(外底)のプレス工程の変更によるエネルギー、廃棄物削減
- 3) アッパー(甲被)部分の抜き型の統合によるエネルギー、廃棄物削減
- 4) アッパー(甲被)部分の部品削減によるエネルギー、廃棄物削減
※7 同モデルで環境配慮に取り組まない場合との比較